椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア

脊髄神経は椎骨という骨に囲まれ保護されています。その椎骨と椎骨の間のクッションを椎間板といいます。その椎間板が飛び出してしまって脊髄を圧迫してしまう病気が椎間板ヘルニアです。

脊髄が圧迫される結果、痛みや、肢をうまく動かせないといった運動機能障害や、肢の感覚麻痺や膀胱の麻痺(尿を垂れ流ししまう)などが生じます。ダックスフンドやフレンチ・ブルドックなどに多く突然発症するハンセンⅠ型と、徐々に進行ハンセンⅡ型があります。

臨床症状

臨床症状はヘルニアを起こした場所や、グレード(麻痺の程度)により様々です。最も軽度の症状としてヘルニアを起こした場所(頸部や背部、腰部)の痛みから始まり、その後、ふらつきや肢が動かせないといった運動麻痺へ進行します。さらに重症になると感覚麻痺や膀胱麻痺が生じます。皮膚や骨をつねっても痛みを感じなくなります(=感覚麻痺)。

  • 突出物質
  • ヘルニア摘出
  • ヘルニア摘出

診断

犬の椎間板ヘルニアの診断には、その症状に対する身体検査、神経検査などを的確に行う事が最も重要です。そのうえで、椎間板ヘルニアが疑わしい場合にはCTなどの詳しい画像検査を行ない、脊髄が圧迫されている事を確認する必要があります。

犬の椎間板ヘルニアは麻痺の重篤度によって5段階に分類(グレードⅤが最も重症)されます。このグレード分類と画像検査により、保存療法にするか、外科療法にするかを決定します。

また、グレードⅣ・Ⅴの麻痺の症例のうち約10%が「進行性脊髄軟化症」※という、致死的な病態へと進行するとされています。※進行性脊髄軟化症とは…脊髄の病変が広がる事により、進行性に脊髄が死んでしまう状態です。一度発症すると72時間以内に急速に進行し、最終的には呼吸をするための神経も麻痺するため、呼吸ができずに亡くなることがあります。

治療法

麻痺の程度(グレード)、経過、画像所見などによって治療法が決定します。グレードが低い場合には保存療法(オーダーメイドのコルセットや内服薬など)で治る可能性もありますが、中程度〜重度の麻痺がみられる場合には圧迫物質を取り除く手術が必要となります。また、軽度の麻痺の場合にも、症状が持続し改善がない場合、脊髄が重度に圧迫されている場合には手術により治療期間が短縮される場合があります。

理学療法

手術後の早期機能回復には理学療法がもっとも有効です。理学療法を実施することで、運動機能の改善に必要な筋力の増強・神経機能の回復につながります。手術をしていない内科治療中では、理学療法を無理に行ってしまうと症状の悪化に繋がることもありますので注意が必要です。麻痺の程度や画像検査の結果に基づいて適切なプログラムを作成して実施することが必要になります。

頸部椎間板ヘルニア

頚部椎間板ヘルニアは頚椎(くび)の部分で発生する椎間板ヘルニアです。 胸腰部(胸や腰)の椎間板ヘルニアに比較するとその発生率は1/4程度とされていますが、発症すると頚部の激痛や神経麻痺が生じ、痛みで眠ることができない・神経麻痺で歩けないなどの症状がでます。

  • 頚椎に作製した骨孔
  • 椎間板物質の摘出の様子
  • 摘出した椎間板物質

診断

診断には胸腰部椎間板ヘルニアと同様にCT検査などが必要となります。画像検査を実施する事でヘルニアが発症している部分が分かります。

治療法

頚部椎間板ヘルニアの場合にも内科治療(消炎鎮痛剤や安静)で症状が改善されない場合には外科手術が適応となります。外科手術は気管や食道を分けて頚椎にアプローチをして手術を行なうベントラルスロット術が実査されることが多いです。頚部には呼吸をしたり体温調節を行なうなど生命維持に必要な神経が多く存在しているため、頚部椎間板ヘルニアの手術には熟練した技量が必要となっております。

犬の椎間板ヘルニアの手術

犬の椎間板ヘルニアの手術は神経(脊髄神経)の近傍の手術となるため、しっかりとした滅菌管理が必要となります。手術部分にはドレープを使用し、毛根に存在する常在菌などが術部を汚染する事を防止する必要があります。清潔な手術室で手術を実施しないと術後の感染に繋がります。

椎間板ヘルニアにあてはまる症状

  • 動き出しが鈍い
  • 熱っぽくだるそう
  • 脚を引きずる・かばう
  • 立ち上がる時や歩くときにふらつく
  • 脚を痛がる
  • 立ち上がれない
  • おしっこを漏らしてしまう